ことのはじまり

忘れもしない、2012年3月。その日は私の誕生日でした。

家族はわざわざホテルのレストランの個室を予約し、私の誕生日をお祝いしてくれたのです。ケーキの乗ったお皿を幼い娘が運んできてくれて、ケーキの横にはチョコレートでお皿に「おかあさんおたんじょうびおめでとう」と書かれていました。ああ、私はなんて幸せ者なんだろう。

夢見心地で翌朝目を覚ますと、耳に違和感を感じたのです。はじめての感覚でした。耳が詰まったような、聞こえがおかしい違和感。土曜日で仕事も休みだったので、私はかなり久しぶりに耳鼻科に出向いたのです。

私の地元ではどこの耳鼻科も大人気です。決して軒数が少ないわけではないのに、何故かいつも混雑している。そこへ私のようなほぼ初診の人間が行くと、だいたい最後のほうに回されるものです。

正午も過ぎ待合室の人の数もまばらになってきた頃、ようやく呼ばれます。診察の結果は「突発性難聴」でした。

とりあえず出されたお薬。このお薬はその後何年もお世話になることになります。メニエール病や突発性難聴になったことのある人なら一度は処方されたことがあるでしょう。耳の病気のお薬のスタメン的な存在。「アデホスコーワ」と「メチコバール」です。

最近ではメニエール病をはじめ突発性難聴、良性発作性頭位めまい症など耳が起因の病気になる人が本当に多いので、「とにかくすぐに医者に行って早期に治療を始めるのが肝要である」ことは常識になっていますが、当時はまだこの病気も今ほどポピュラーではなかったので、私も甘く見てしまっていました。

これが心から悔やまれることです。耳の違和感と言っても多少聞こえがおかしい程度だし、私は処方された薬が切れる頃にはだいぶ緩和された耳の違和感を勝手に「大丈夫」と判断し、そのまま放置してしまったのです。

そして、半年以上過ぎてから突如起こった「めまい」。これが悪夢のはじまりだったのです。

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